Red velvet cake

 アメリカに住む日本人でバターケーキが好きな人はあまりいない。

ドラマのSex and the City で主人公のキャリーが通うマグノリアベーカリーが東京に出店したって、あのバタークリームがのっているカップケーキを果たしてどれだけの日本人が本気で美味しいと思っているだろう。

 

 でも私はこのまさにアメリカの味、バタークリームのたっぷりのったカップケーキが好きだ。疲れている時に、マグノリアベーカリーのカップケーキを食べると本当にこれが、Heavenly taste、天国にも昇るような気持ちにさせてくれるケーキだと思う。

 レッドベルベットケーキも同じようなケーキで真っ赤なスポンジケーキの上に白いバタークリームが施された、味も見た目も日本では絶対にお目にかからないケーキだ。

 

 上品な味覚を持つ、日本人の女の子たちが眉をひそめて、もしかしたら心の中で「こんなもの」と思っているかもしれないケーキを好きな自分が好きだ。

 それは、こんなに文句を言ってきたアメリカのことを少しは好きになれた、と思えるから。こんな分かりやすい見た目と味、こんなデザートを愛するアメリカ人を少しは理解することができた、そう思えるからだ。

 

 日本とは対極な文化や価値観を持つアメリカで、苦労がなかったと言ったら嘘になる。でもその苦労を分かち合ってくれたアメリカ人や、助けてくれた人たち、私は感謝の気持ちでいっぱいだ。

 でもそんな仰々しい感謝の言葉より、私が彼らと同じものを好きになった、そのことの方が私はもっと喜んでもらえる気がする。上品な味覚を持つ日本人のままではなく、アメリカでアメリカ人が愛するものを好きになれた自分になれたこと、それが私は嬉しい。